君の詩を聴かせて



「…大和って好きな子いるの?」

「はあ?…いないけど」


 何でそんな話に…?

 手を揉みながら琉愛を見る。

 ていうか、琉愛の口から“好き”なんて出てくるなんて…。

 しかも人間相手に。


「…さっきの歌、好きな子がいるみたいだったから」

「…いないから」


 好き、なんてわかんないし。

 見上げた空は青い。

 目を閉じれば、円香の顔が浮かんだ。

 …好き、とかじゃないんだ。

 ただ、今までずっと一緒だったから違和感があるだけ。

 好きなんかじゃない…。


「…ふーん、けど。
 好きな子もいないのによくあんな歌作れるね」


 …これって批判されてるのか?

 イマイチ琉愛ってわかんないんだよね…。

 …ただの疑問、かな。


「俺の場合勢いだよ」

「…ふーん」


 地べたに体育座りする琉愛は、やっぱりどこか他の人とは違う。

 着眼点も少しズレてるし。


「…大和、何が好き?」

「…最近はトラ」


 トラって、何か可愛いんだよなぁ…。

 近くの動物園で赤ちゃん生まれないかな。

 そしたら見に行くのに。



< 55 / 104 >

この作品をシェア

pagetop