君の詩を聴かせて
「…大和って好きな子いるの?」
「はあ?…いないけど」
何でそんな話に…?
手を揉みながら琉愛を見る。
ていうか、琉愛の口から“好き”なんて出てくるなんて…。
しかも人間相手に。
「…さっきの歌、好きな子がいるみたいだったから」
「…いないから」
好き、なんてわかんないし。
見上げた空は青い。
目を閉じれば、円香の顔が浮かんだ。
…好き、とかじゃないんだ。
ただ、今までずっと一緒だったから違和感があるだけ。
好きなんかじゃない…。
「…ふーん、けど。
好きな子もいないのによくあんな歌作れるね」
…これって批判されてるのか?
イマイチ琉愛ってわかんないんだよね…。
…ただの疑問、かな。
「俺の場合勢いだよ」
「…ふーん」
地べたに体育座りする琉愛は、やっぱりどこか他の人とは違う。
着眼点も少しズレてるし。
「…大和、何が好き?」
「…最近はトラ」
トラって、何か可愛いんだよなぁ…。
近くの動物園で赤ちゃん生まれないかな。
そしたら見に行くのに。