君の詩を聴かせて



「…哺乳類は好きってわかるのに、人はわからないんだ」

「…琉愛だってそうでしょ」

「うん」


 ほら、やっぱり。

 俺は他の人とは違うんだ。

 なんだろ…不思議系?

 って、祥次が言ってたような気がする。

 俺もってことは琉愛もなんだろう。


「…気付いてないだけで、心の中に誰かいるんだよ」

「……、」


 無表情な琉愛の瞳。

 それに写っている俺も、無表情だった。

 心の中に…か。

 そんな人、いないよ。

 いたとしたら……いや、違う。


「…のど渇いた」


 そう言って、琉愛は自販機に向かった。

 その足取りは軽いんだけど、どうにも遅すぎる。

 脚が悪いとかじゃなくて、多分性格的なもの。

 琉愛を動物に例えたらナマケモノなんじゃ…なんて。

 だってマイペース女王だし。

 見上げた空は蒼く澄んでいた。

 前は綺麗だなぁ…とか思ってたんだけど。

 …今はなんとも思わない。

 空の色も花の色も何も感じない。

 ただ…、


「…あ、モンシロチョウ」


 白しか、感じない。

 ふう、とため息を吐いて、即興曲を弾く。



< 56 / 104 >

この作品をシェア

pagetop