君の詩を聴かせて
「っ…はあ……」
歌えば少しは楽になると思った。
けど、余計に切なくなった。
窓から見える三日月が、不器用な俺を嘲笑っている気がした。
…俺にどうしろっつーわけ?
特に意味はない、はずだった。
どうせ誰にもわからないんだし、適当でいいって。
けど…名前って言われたとき、あれしか思い浮かばなかった。
気付かなくていい…誰も知らなくていいんだ。
なのに何で俺は変な期待をしてるんだろう。
ただ…アイツにだけは、わかってほしかったのかもしれない。
そんなの俺のわがままなのに…。
アコギを置いてベッドに寝っ転がる。
そういえば…渚さんは、誰から俺が音楽やってるって聞いたんだろう。
もしくは見られたのか…?
別にどっちでもいいけど、うるさくされるのは困る。
俺も琉愛も騒々しいの嫌いだし。
あ…なんか眠くなってきた。
いいや…このまま寝よう。
そう思って目を閉じたとき、携帯が鳴り出した。
画面には着信の文字。