君の詩を聴かせて
そして…景山さんからの電話だった。
「はい、もしもし」
『あ、蕪木くん?
遅くにごめんね…、今大丈夫ですか?』
「はい、大丈夫ですけど…」
……もしかして、エンディングのことで何かあったとか?
暗すぎるとかクレームが来たとか…。
…それだったら申し訳ないんだけど。
『反響が凄いの!
YMって誰なのか、って!』
「…そうなんですか?」
考えてたことと正反対で驚いた。
『そうなの!
…ねえ蕪木くん、やっぱりデビューしてみない?
絶対に売れると思うんだけど』
「…デビューはしません。
そういう約束だったので…寝るので失礼します」
『あ…っ』
終話ボタンを押してそのまま電源も落とす。
…デビューはしない。
バンドもしない。
俺は…このままでいいんだ。
『…大和の音…好きだよ』
そう、言ってもらえたから
俺は1人で歌い続けるんだ。
自分の気持ちを…想いを。
あの日のように、三日月は鈍く輝いていた。
『…ねえ…歌って?』