君の詩を聴かせて



 そうしてたらなんとなく、バンドもいいかもしれない

 なんて思い始めた。

 …軽音部には入らないけどね。







 帰りの電車の中でも、頭の中では音が響いていた。

 アンプを通じて部屋中に響く感覚。

 …ちゃんとしたとこでライブ、してみたいなぁ。

 そんな風に思う自分に驚いた。

 ため息を吐いて、のろのろと階段を昇る。

 人多いなぁ…誰かに会ったりして。 

 そんなことを考えて、笑った瞬間

 本当に声を掛けられた。


「…大和?」

「…円香、久しぶり」


 久しぶりに見た円香はどこか大人っぽかった。

 ベージュのブレザーにストライプのYシャツ。

 ネクタイとスカートは黒で落ち着いてる。

 …俺とは、違う制服。


「久しぶり…高校入ってから会うの初めてだね」

「うん、部活とかないの?」

「文化部だから楽なんだよ」

「ふーん…」


 改札を出て、並んで歩いた。

 隣から香水か何かが匂ってくる。

 イチゴの香り…かな。

 ……気持ち悪い。



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