君の詩を聴かせて



「っはあ…ありがとうございました」


 頭を下げて隅に捌けた。

 遅れて鳴り響く歓声と拍手。

 何だか胸が熱くなった。


「…大和」

「…琉愛?どうしてここに?」

「…ディンゴが」

「ディンゴ?」


 …ディンゴは確か食肉類イヌ科で飼いイヌの亜種、祖先のタイリクオオカミの亜種、または完全に独立した種とかいろんな説がある動物。

 恐らくは1万年前に飼いイヌからわかれて野生化したって言われてるけど。

 そんな動物が近くにいるわけ…あ。


「…もしかして山浦のこと?」

「…うん」


 山浦がディンゴか…。

 まあ似てるっちゃあ似てるよな?

 凛々しそうな顔付きとか、立派な体躯とか。

 琉愛の中で山浦はディンゴなんだ…。


「蕪木、ライブ来たぜ!
 お前歌上手いんだな!」

「ありがと、…大したことないよ」

「大したことあるだろ!」


 何かわかんないけど頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。

 …俺、子供扱いされてる?


「蕪木ー!!あんたもう最高っ!!」

「うわっ!…びっくりしたぁ」



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