ソラルリラ―晴色の傘―
 ソラルリラに生まれた女の15歳には、深い意味がある。
「そっか、もう私、外の国に行けないんだ……」
 史上最大の悪法と言われる法律『空人空調平等化法』……通称『カラカラ法』の拘束力によって、ソラルリラ生まれの女が15歳になると、国の外に出ることが固く禁じられている。
 ここでは子供が生まれると首筋にICチップを埋め込む事が義務付けられていて、身分証などを持ち歩かなくても専用の機械を使えば、身体情報単位でどこの誰だかすぐに分かる仕組みになっている。
 15を越えたソラルリラ生まれの女が一方でも国の外に出ようものなら、読み取り機を兼ねたゲートと呼ばれている無人検問所に備え付けられた銃火器で、あっという間に蜂の巣だ。
 こんな非人道的な悪法が未だに続いているのは、ひとえに駐屯軍の圧力のせいだとも言われている。
 理由は分からないが、この町、ひいてはこの国から人口が減らないようにする為だ、と。
 確かにこんな雨しかない町、出ていけるものなら出て行きたい。
 しかし15歳未満といえば、私のように一人で世の中を生きていく力などまだまだ持っていないような餓鬼ばかりだ。
 父親だけの子供は町を出て行く事も多いようだが、母親を置いて行くか、あるいは少女一人で国を捨てて出て行く事はそうそうない。
 ……私もあと一週間で篭の鳥か。そう思って肩を落とすと、その肩にポンと手が置かれる感触があった。
「そこで、俺は考えたんだ。これからお前が外の国に行けないなら、せめてお前の邪魔をする雨を止ませてやろうじゃないかってな」
「そんなの――」
 泥の跳ねた顔のままニヤッと笑って見せる幼なじみは、私の疑問を聞く前に懐から一枚の紙切れを取り出して、私に見えるように広げた。
「無理だと思うか? だが、俺のメモ帳に不可能って言葉はメモっていない!」
「……自分で書くのね」
 ともあれ広げられた紙のは、どうやら古い絵本のページのようだ。
 黄ばんだ紙には赤みがかったオレンジの丸と、その周囲を取り巻く火の粉のようなものが描かれている。
「ええと……『ここは太陽の国ソラルリラ』――!?」
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