メトロノーム
音楽室に入って直ぐ目に入ったのは、
隅の方で楽器の準備をしている人影。
「坂井、俺がいるぞ?」
その人影は私の方を見て言った。
「うわっ!尾崎(オザキ)先輩っ」
その人影は、
同じパートの先輩で私の好きな人・尾崎隆哉(タカヤ)先輩だった。
「うわっ!て酷くないか?」
尾崎先輩の言葉を半笑いで聞きながら
私も準備を始めた。
「だって〜……あっ!」
「どうした?」
「メトロノーム忘れたかも…」
私はそう言って鞄をひっくり返した。
「おいおい。散らかすなよ」
「でっ、でもメトロノームが…」
「俺、今日2つ持ってるから貸してやるよ」
「ほらっ」
と、尾崎先輩がメトロノームを貸してくれた。
「あ…ありがとうございます」
「さっさと準備しろ。練習するぞ」
「なんで私が先輩と!」
文句を言う私をよそに、
先輩は準備を終え吹き始めた。