メトロノーム
─カチャ
私は部屋のドアを開けた。
久しぶりに人に会う。
ちゃんと喋れるかな?
そう思いながらドアから顔を覗かせた。
「弥琴ちゃん?こんにちわ」
先輩のお母さんは私の目線に合わせてしゃがんだ。
先輩のお母さんに会うのはこれで3回目。
お通夜と、お葬式と…
でも、2日ともボーっとしていて
しっかりと見るのは今日が初めてだった。
…優しい人。
目が…先輩に似てる…
「こ…ん……に、ちゎ」
久しぶりに出す声は掠れていた。
それでも、先輩のお母さんは優しく微笑んでくれた。
「入ってもいいかしら?」
私が眩しそうにしているのに気がついて気を使ってくれたのか
先輩のお母さんはそう言って私の部屋を指さした。
私は頷いて先輩のお母さんを部屋に入れた。
「暗い…けど………カーテ、ン…開け…ま、すか?」
「ありがとう。このままでいいわ」
先輩のお母さんは本当に優しい。
「あり…がと、ござ…ます」
そう言って、私はまだ動いているメトロノームを止めて座った。