ヒレン
握る手に力が篭る。お願い、智、和真



手を消毒し救急部へと急いだ。


「シンちゃん!」


救急部につくと同時にサイレンが聞こえてくる


「車との接触事故だ。かなり出血している」


「……っ」



血の気のない顔



「大丈夫だ。チコ、自分を信じろ」



真の声が智子を我に返した。



「こっちに急いで。北先生も準備お願いします」



一つ深呼吸をする。


智を失ったとき、もうこんな思いをしたくない。



誰にもして欲しくない。



そう思った。



和真を失ったとき、自分の無力感に押しつぶされそうになった。



何で自分は誰も救えないんだろう。



でも、今の私なら。手術着に着替えてそっと目を閉じた。



大丈夫。そう言い聞かせた。



「チコ」



「お願いします」


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