ヒレン
智子が離した手を秀明は掴んだ。そのまま顔を近づけると、智子の額にそっと唇が触れた。
「大丈夫。人のことより自分の心配をして」
何事もなかった表情(かお)をして腕を振りほどき、残っていた本を拾う姿が記憶の扉を叩く。
「送る」
足元の本を手渡しながら智子の瞳を真っ直ぐ見る。わずかな沈黙、首を横に振った。
その表情(かお)に言おうとした言葉を飲み込んだ。
「先に帰ります」
最後の1冊を智子に渡し、後ろ手でドアを閉めると、秀明は部屋を後にした。
「大丈夫。人のことより自分の心配をして」
何事もなかった表情(かお)をして腕を振りほどき、残っていた本を拾う姿が記憶の扉を叩く。
「送る」
足元の本を手渡しながら智子の瞳を真っ直ぐ見る。わずかな沈黙、首を横に振った。
その表情(かお)に言おうとした言葉を飲み込んだ。
「先に帰ります」
最後の1冊を智子に渡し、後ろ手でドアを閉めると、秀明は部屋を後にした。