ヒレン
研究棟の前、まだ明るい智子の部屋が目に入ると、アクセルを捻ねる。


エンジン音が遠ざかるのを聞くと智子は窓を開けた。





4月とはいえまだ夜の風は冷たい。




机の引き出しから煙草を取り出すと火をつけた。




煙が開けられた窓から天へと昇っている。





煙草を離した口元へ1滴の雫が流れていく。


空に浮かぶ下弦の月だけが暗くなったキャンパスを照らしていた。

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