ヒレン
「もしもし」


「ヒデ?チコ、長崎の様子どうだ?」


電話の主は天文部部長の北真(まこと)であった。


「部長?何で・・・・・・今熱が39度2分です。昨日の夜より上がってます。病院に連れて行こうとしたら泣いて嫌がって」



「だろうな。20分ほどでそっちに行くから。それまで見ててくれ」


「・・・・・・わかりました」


そう言うと、電話は切れた



智子の方に向き直ると、荒い呼吸(いき)をしていて時々苦しそうに咳をしている。



額に冷たいタオルをのせると、小さく身動ぎをした。


「……る。ごめんね。さとる……」
頬を涙が伝う。



その涙を秀明は濡らしたタオルで拭った。

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