ヒレン
少し戸惑いながらも、誘惑に耐えられなかったのか、智子は枕に頭を戻そうとした。



「ちょっと待ってろ。枕取り替えてくる」



ベッドから氷枕を取るとキッチンへと向かう。部屋に残された秀明がベッドサイドに座りなおした。



「横になっていたほうが」



「・・・うん」



そう言って横になると目を閉じた。しばらくすると真が氷枕を持って部屋に戻ってきた。



「ちょっと頭上げるぞ」



そう言って横になっていた智子の頭の下に枕を置いた。



「ありがとう」



そう言って再び目を閉じると、時折咳をしながらも寝息が聞こえてきた。先刻のような呼吸の荒さはない。



「少しは落ち着いてみたいだな」



「はい」



「夕飯どうする?」



「じゃあ、うちに・・」



そう言って二人で5階に降り、夕食を口にした。
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