ヒレン
長針と短針の角度が直角に近づくころ、二人は智子の部屋に戻り、様子を見ていた。



「一応、今晩だけ交替で見てるか」



「・・わかりました」



時計の針が再び直角に近づく頃、薄っすらと智子は目を開けた。



「水でも飲みますか?」



「・・うん」



微かに頷いた智子に秀明は口の開いたペットボトルを渡した。



「ありがとう」


上体を起こし、ペットボトルを受けとる。



「ごめん、そこのクローゼットから着替えだしてもらってもいい?汗かいちゃって」


「・・わかりました」


クローゼットを開け、中の引き出しから上下のスウェットを取り出すと、水を飲んでいた智子に渡した。


「タオル絞ってきましょうか?拭いた方がいいでしょ」


「・・お願い」


絞ったタオルを2本ほど智子に渡すと、秀明は、廊下へと出た。頃合を見計らって中へと戻る。着替えが終わった智子が目を開けて横になっていた。



「ねぇ・・和くんの話聞かせて」


ベッドサイドに座った秀明声をかける。


「先輩の方が詳しいと思いますが?」


首を横に振り、言い返した。



「和くん、高校や中学の話全然してくれないの」



「・・・わかりました。でも話したこと、言わないでください」



智子が小さく頷き、目を閉じると、秀明は昔話を口にした。その話を聞きながら智子は夢の世界へと導かれていった。

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