(無題)
馬鹿な男だと思った。
さしずめ指輪を頂けばその鉄くささに飽きた。
浸食してくるコケみたいなやつらは痒くてたまらない。
湯で流しても一週間消えないのか、嫌になる。あぁ、墨と同じ色だ。
薫は指輪をつけて、こんな冷たいやつに生き物なんて言えるのか。
と嘆き、
あの時自分の思った愛らしい言葉に嫌悪を抱いた。
何が“証”だ。
昔、
結婚しようと約束したレズビアンの女と宝石店に行った時の
女の笑顔を思い出した。
太陽みたいな~とはああゆう顔の事で、
思わずその暖かい光りを浴び自分まで暖かい気持ちで口の両端が釣り上がった自分の顔を思い出して吐き気がした。
触れた女の指は細くて、片手でへし折ってやろうと思えば出来たのに
何故しなかったのかわからない。
たまに、自分が人間である事にとことん嫌気が射す。
指輪を欲しがった女みたいに指輪を欲しがっても女になれない何処かしら女くさくない自分にも腹が立つ。
そんな時は
全て馬鹿だと思う。
全て阿呆らしく思えた。
それが私の救いだった。