Tears in Love 〜せつない想い〜下
医者の言葉は
その場にいたあたし達の胸を
すごく痛めた。


「・・・・そんなぁ・・・・っ」


矢野先輩のお母さんは
泣き崩れる。


「それじゃあ、
全くできない・・というのは
ないんですね?」


「はい。
息子さんの回復次第ですね」


医者はそう言うと、
矢野先輩を運び始めた。


「大地・・・・っ」


「父さんだ・・・!

分かるか・・・!?


おい、大地・・・・!」


「大地・・・!

ねーちゃんだよ!!

早く目覚ましな!!」


家族が呼び掛ける。


医者はそのまま病室へと運ぶ。


・・・ガララッ


あたしはただただ
見つめるしかなかった。



矢野先輩・・・・。



2月14日。


それは最低最悪な日になった。


チョコ・・・あのまま
矢野先輩は受け取らなかった。


渡せば・・・良かった。



矢野先輩・・・・。



あのあとあたしは
長瀬先輩と一緒に自宅へと
帰った。



矢野先輩の意識は次の日も
またその次の日も
戻らなかった。


そして。



あたし達は春休みに入った。


事故から一ヶ月。


矢野先輩はまだ意識が
戻らないと言う。


あたしは初めて、
お見舞いに来た。



その日は
いつもより太陽がでていた。



そう・・・その日は
特別な日だった。



・・・ガララッ


病室を開けるあたし。


矢野先輩は病室のベッドで、
眠ったままだった。


矢野先輩の親は
あたしを見るなり、

明るい笑顔で


「よく来たわね、空ちゃん」


そう言ってくれた。


あたしはゆっくりと
矢野先輩の
眠っているベッドに近づく。


「・・ごめんなさい。


お見舞い遅くなってしまって・・」


「大丈夫よ。


ほら、大地。


空ちゃんが来てくれたわよ」



窓から風が入り、
矢野先輩の髪は揺れる。


「・・ほら大地!

空ちゃんだぞ!!」


「・・・・・」
< 19 / 29 >

この作品をシェア

pagetop