Tears in Love 〜せつない想い〜下
矢野先輩の言葉が
あたしの胸を強く締め付ける。


その頃・・・長瀬先輩は。



「・・・啓。本当にいいのか?」


「・・・はい、父さん。


俺、覚悟を決めました」


「・・・そうか」



まさか。
あんな事件が起こるとは


その時のあたしには
想像もつきませんでした。


それを知ったのは
矢野先輩が退院した
春休みの終わりの頃だった。


「・・・え。



あの・・・もう一回
言ってくれませんか?



聞き取れなくて・・・」


あたしは
その日初めて知った。


「・・・だーーかーーら!!


長瀬先輩!!


今日、東京に
転校するんだってさ!!」


あなたが
東京に転校することを。


あたしは
その日初めて知った。



今度こそ
本当に・・・・。



お別れなんだね。




やっぱりあなたとあたしは




結ばれない・・・運命なんだ。




決して交わることが
許されないあたしとあなた。




さよならなんだね。




長瀬先輩・・・・。




本当に・・・本当に・・・・




さよならなんだね・・・・・。




「・・・柳原、啓の事聞いたか?」


矢野先輩はあたしに近づく。


下を向いて、
驚いて答えられないあたし。


「・・・・」


・・・ぐっ


あたしの目を
後ろから腕で拭く矢野先輩。


そう・・・あたしの目から
涙が流れていた。


「・・・や・・・矢野先輩!?」


「・・・他の奴を想って、
泣くんじゃねーよ・・・」



「ヤキモチですか?矢野先輩?」



不思議になって
そう聞くあたし。


すると。


矢野先輩は
あたしから離れた。


・・・ばっ


「・・・!?」


「・・ヤ・・ヤキモチなわけ
ねーだろ!!


俺はただ・・・!!」



頬を赤く染める矢野先輩。


あたしは優しく微笑み、
矢野先輩の腕を掴む。
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