刀人―巡りめく戦乱の中で―
「私の代わりにこれを、四十万様へとお納め下さい」
「でも、それは祭様にとって大切な物ではないですか!!」

姫である自分の為に使わなかった金銭を集めた分と戦で戦績を上げた分全てとで初めて誰かに宛てて買ったもの。姫という肩書をお渡しできない代わりとして代用になるかもしれない唯一の品。

受け取ることを渋るかのようにじぃがこんなにも声を張り上げるのも無理は無いのかもしれない。
じぃは優しい心の持ち主だから。

何しろこの品を選ぶ時に傍にいたのは、目の前にいるじぃなのだから。

「いいのです。……今、私にできることはこれしか残されていません」
「その前に俺がそれを奪うってこたぁ頭にないのかねぇ?」
「っ…………」

男の声に慌てて小太刀を体の後ろに隠そうとするが、既に遅い。そう思いここで弱気な態度を見せてはいけないとばかりに小太刀を胸の高さまで持ち上げる。


「私にはこれ程の価値はございませんか?」


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