天蓋花―テンガイバナ

"可愛いがってたんだから"

その言葉を何回かゆっくり頭で繰り返す。

誰を?
いや、何を?

思い出せ、何かあるはずや。

目の前が赤く染まる。
女の子の顔が段々と歪む。

真っ黒な髪の毛
金色の瞳。

何を重ねてる?
なんて、今更やんか。

「…きら。」

無意識の内に口にした瞬間、反応した小さな体。

見上げて来た瞳にもう一回。

「金羅。」

はっきりと呼んでやれば、嬉しそうに笑った。少し照れたようなその表情は初めて見る。

伸ばされた手が俺の頬に触れて、痺れるくらいの冷たさを感じると共に、

俺の意識は10年前に遡った。

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