天蓋花―テンガイバナ

遭遇


その日は、何故か妙に肌寒い日だった。

理由は分からない、
ただやけに、寒かった。

温かいジャンパーに腕を通すと、俺は家を飛び出して自転車にまたがる。


「…寒っ。」

通学路でもある、緩やかな坂道。いつもなら風が気持ち良いこの坂も、今日は悲しいくらい冷たい風が吹く。

思わず目を不機嫌そうに細めて呟くと、一気に坂を下って平坦な道を目指した。

「…あれ…。」

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