忘れたい 忘れたくない
トオルと知り合って半年が過ぎた、10月のある日。
あたしは初めてのデートに踏み切った。
職場以外で会うのは初めて。
あたしは朝からそわそわしていた。
服が決まらない。
髪がまとまらない。
メイクに気合いが入り過ぎる。
靴はどうする?
あたしは1人でうろたえていた。
すると
" 今、家出たよ "
トオルからのメールに、あたしはますます焦っていた。
30分程すると、携帯が鳴った。
" もうすぐ着くよ "
何とか支度を終えたあたしは、戸締まりを確認して、家を出た。
うちの裏通りの、人目に付かない場所へと急ぐと、トオルの車を見つけた。
あたしの知らないトオルを教えて。
トオルの知らないあたしを見て。
そんな気持ちを胸に、車に乗り込んだ。