忘れたい 忘れたくない
「 おはよ 」
トオルは笑顔で迎えてくれた。
「 おはようございます 」
いつもの笑顔、いつもの挨拶。
こんなにドキドキしてるのは
…あたしだけ?
向かった先は、海沿いにあるアウトレットモール。
車中、信号待ちで止まるたびに、
トオルはあたしに笑顔を向けた。
「 緊張してるの? 」
あたしのドキドキに気付かれて
「 …ちょっと… 」
そう答えると
まるで子供をなだめるように、
よしよし、と頭を撫でられた。
仕事中には見せない、トオルの穏やかな表情に、あたしは何だか安心し始めた。
15歳も年上のトオル。
ふと、あたしは、10日前の出来事を思い出した。