忘れたい 忘れたくない

10日前は、トオルの誕生日だった。

ちょうど日曜日で、あたしは仕事が休みだった。

トオルは仕事で、休みのあたしに何度もメールをくれた。


" 今日は何してるの? "

" 旦那と仲良くしちゃイヤだよ "


あたしは1日中ダラダラと過ごしていた。

というか、夕方まで寝てしまっていた。

気合いの入らない日曜日。

携帯を見ると、トオルからのメールがたくさん入っていて、1日中寝てしまった事を後悔した。

最後のメールを見た時、

あたしの後悔はマックスになった。




" オレ、今日誕生日なんだけど "




トオルは誕生日の前から、何度もアピールしていた。

30日、誕生日なんだ。

何度も聞いていた。

だから、12時になったらメールしようかとも思った。

だけど、夜中にメールしたら迷惑だろうと思ってやめた。

土日仕事が休みのあたしは

土日の日にちをすぐ忘れる。

30日が誕生日って事を忘れてたわけじゃない。

今日が30日だって忘れてた。


…… どうしよう。

あたしは慌てて、素直に謝った。

誕生日を忘れてたわけじゃない、と弁解したけど、トオルはすっかりスネてしまった。


好きな人の誕生日だったのに。


あたしも、自分自身がイヤになった。




< 14 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop