あんでっど
声の主を見た途端、おばさんも美春も震えが止まり…それどころか…
『び、美形…』と、二人とも頬を染めてしまっていたのだ。
いきなり現れた美青年は、美月神社の神主の孫で月野真と名乗った。
おばあちゃんに和菓子を頼んでいたらしい。
「そうでしたか…。お亡くなりになっていたのですね。電話で初めて注文したものですから、お返事がなかったので気になって伺ったのです。」
と青年は、端麗な顔に憂いをおびた表情を浮かべた。
細面の上品な顔立ちで、それでいてピンと伸びた姿勢は彼の立ち振る舞いをより優雅に見せていた。
「そう。あなたは最後に立ち会った方なんですね。大変でしたね」
「あ、いえ、あたしは何も…」
真の涼やかな眼差しが向けられるたび、美春はボーっとしてしまい、返事もしどろもどろになった。
「しかし和菓子は無理なんですね。さて困った。まだ日はあるといえばあるのですが…」
真が眉をひそめた。
「申し訳ありません。最近は大量注文もありませんでしたし、急でしたのでお待ちのお客様がいたなんて…。」
おばさんは申し訳ありませんと頭を深々と下げていたが
「あ!」
おばさんは笑顔を取り戻した。
「ご注文は大丈夫です。」
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