あんでっど
おばさんは続けて言った。
「うちの息子が場合によっては継いでもいいと言ってまして。」
美春は目を丸くした。
「猛さんは和菓子も作るんですか?」
おばさんは頷いた。
「専門じゃないけど何でも出来るはずよ。あの子は食いしん坊だから…」
美春と真は思わず顔を見合わせた。
「お申し出は嬉しいのですが、やはり不安です。注文は息子さんが店をお継ぎになってからにしましょう。お取り込み中だったようですし。」
真がチラッと見た先には、さっきの鬼のような者たちが散らかした紙やら箱やらがひっくり返っている。
夢ではなかったんだ。
おばさんと美春は、またも震えあがった。
「何かあったのですか?」
真が美春に心配そうに聞いてきた。
「あの、その~…」
美春は、おばさんに助けを求めた。
「きちんと片付けようと思って一人でガタガタとやってたら崩れちゃいまして。」
おばさんは頭をかきながら答えた。
「また片付けをし直さないと。ご注文の件は申し訳なかったです。」
と真に頭を下げた。
「いえいえ、お取り込み中に失礼しました。」
真も頭を下げ、彼は店から出ていった。おばさんは真が行き過ぎるのを見届かると戸をしっかりと閉めた。
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