あんでっど
美春が茫然自失している間に救急車が到着し、おばあちゃんを運んでいった。
そのまま、美春は暫し佇んでいたのだが、ふと我にかえり、周りを見渡した。
お店、空っぽだけどいいのかしら…
「だれ?」
人の気配を感じた美春が後ろを振り返った途端、白い眩い光が美春の目をしばたかせた。
『見つけた!主さまに報告じゃ!』
『お手柄じゃ!お手柄じゃ!』
黒い点のようなものがバラバラと現れて騒いでいる。
「なに、これ…」
美春が未知への恐怖に怯えていると、ガラリと、戸があいた!
黒い影は一斉にいなくなった。
「ばあちゃんは?!」
小さな店の天井にぶつかりそうになりながら男が叫んだ。
「おふくろ、どこだ!」
背が高いだけではない。彼は体格もいい。胸板も厚く、オタオタして振り回している手も大きい。
「あの…」
大きな彼には、彼の肩にも届かない背丈の美春は目に入らなかったらしい。
「…どちらさまですか?」
おずおずと美春が彼を見上げながら尋ねると
「あんたこそ、誰なんだ?」
と頭の上から当たり前の答えが返ってきた。
戸惑う大男と視線がやっと合った。
美春と同じ位の年だろうか。
目は細長く切れて昔のお侍さんのようだ。
人も良さげだ。
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