あんでっど
「あたしは大福を買ってて。そしたら、おばあちゃん、急に苦しみだして…
いま、救急車で運ばれました。」
美春が説明すると、男は長い溜め息をついた。
「うちのおふくろがいたはずなんだ。じゃあ、救急車から電話してきたんだな。途中で途切れてしまったんで、もしやと思って飛んできたんだが…」
男は、おばあちゃんの孫で牧山猛と名乗った。
「松田美春さんか…。そうか、お客さんを驚かせて申し訳なかった。後は僕が片づけますから。」
何か分かったら携帯に連絡してもらうよう頼み、美春は店を出た。
自宅に着いた美春は、カバンをテーブルの上に置き、やっと自分の手の中に握り締めていたものに気づいた。
おばあちゃんが渡してくれたものだ。
一体何だろう…
「お札…」
白い和紙の上に読めない文字が書き連ねてある。
神社でもらう護符のようだ。
『決して、…には、はぁ…ちかづい…い、け…』
おばあちゃんは何が言いたかったのだろう。
「神社に近づいてはいけない。」
生前、美春の両親が口癖のように言った言葉だ。
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