あんでっど
おばさんは一瞬顔を曇らせたが
「まあまあ、ごめんなさいねぇ。猛はね、今回の件で遠くの親戚に報告に行かねばならなかったのですよ。ま、あの子のうっかりのおかげで美春さんにお会いできましたから。この、キクおばさんに免じて許してやってくださいな。」
キクおばさんは、笑顔で美春に答えた。
「あの…」
美春はバックの中から、おばあちゃんに手渡された紙を取り出した。
「おばあちゃんが最後に、これを私に…」
その紙を見た途端、おばさんは信じられない!と叫んで、慌てて両手で口を覆った。顔が真っ青だ。
「大事なものなら、お返ししないとと思って…。おばさん?」
キクおばさんは震えていたが、すぐに気を取り直して言った。
「これは『神よせ』が持つものです。巫女さんみたいなもんです。その年の作物の出来を占ったり、悪い病を払ったり。私どもの故郷では、神よせの女性が一人だけ選ばれて死ぬまで神事を司るのですが…。それは次の神よせに渡す護符です。」
「…大事なものなんですね。だったら、お返ししないと。」
その時だった。
ゾッとするような感覚が美春を襲った。
この感じ…あの時と同じ。
あの黒いものたち…
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