ソレデモワタシハアナタヲアイス
モーゼの奇跡
春になった。
美咲のピアスホールも無事に出来上がり、私達は予定通り、クラス替えもなく、同じ顔ぶれで2年生に進級した。
「あーあ、今日も美咲はモーゼだね」
教室の窓から外を見ていた隆太が面白そうに言った。
見ると校門を通った美咲が校舎に向かってスタスタと歩いている。
―――なるほど、モーゼね―――
新入生が入って来てからもう1ヶ月が経過しているというのに、美咲は相変わらず注目を集めていた。
「何、見てんだよ?」
朝練明けの空人が私達につられて窓の外を見た。
「…何?アレ」
私と隆太が見慣れたモーゼ現象を空人は初めて見た様子だった。
「面白いよね。たぶん本人は気付いてないと思うけど」
確かに隆太の言う通り、美咲は一切、気付いていないと思われる。
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