ソレデモワタシハアナタヲアイス
「ん?どうした?」
余裕のせいか空人は優しい表情をしている。
「試合、最後まで見てく?」
美咲の視線の先は空人ただ1人だった。
「当たり前だろ?早く行けよ」
空人はすでに集まっているバスケ部員の輪をあごで指した。
けれど美咲は空人の指示に従う事なく少しの間、黙って空人を見つめてからいつものようにニッと笑った。
「じゃ、大丈夫。私、カレシが見てる試合は絶対、負けない主義なの」
ギャラリーの注目の中、美咲はそう言い切ってから真由子の元に走って行った。
もちろんの事ながら美咲の爆弾発言に体育館はざわめきに包まれている。
それどころか俺達までもが注目を集めつつあった。
「サキのヤツ…」
隣では空人が片手で頭を抱えている。
「空人、ニヤけ過ぎ」
美咲のカレシ宣言がよほど嬉しかったのか、空人は真っ赤な顔に見た事のない照れ笑いを浮かべていた。
―――これでやっと本当に安泰かな?―――
空人が観戦をしていたおかげか、美咲と真由子の実力のおかげか、試合は見事に圧勝だった。
そしてなかなか信じてもらえなかった美咲と空人の関係は、美咲の一言によってあっという間に知れ渡り、晴れて2人は公認の仲となった。
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