ソレデモワタシハアナタヲアイス
「おはよ」
少し微妙になった空気の中、モーゼの奇跡を終えた美咲が到着した。
「おはよ」
私と隆太はいつも通りに返した。
「何?ソラ、バイトで疲れてんの?」
美咲が来ても、空人は机に片頬を押し付けたまま冴えない顔をしている。
「何でもねぇよ」
空人は気にさせるつもりはないらしく、顔を上げて笑ってみせた。
春休みに入ってから、空人は部活のない時間帯にバイトを始めていた。
もちろん来たる美咲の誕生日に備えての事だ。
ガソリンスタンドのようだけれど、詳しい事は何1つ教えてはくれなかった。
「今日もバイト?本当に大丈夫?」
空人の作り笑いに気付いた美咲は顔を覗き込んだ。
「平気だって。今日、部活無いから早い時間に始まって早く帰れるし」
空人は心配させないようにさっきよりも深く笑った。
「そう…なら良いけど…」
美咲は心配を拭いきれない顔のままだった。
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