ソレデモワタシハアナタヲアイス
間もなく、明らかに様子のおかしい美咲が無言で階段を下りて来た。
部屋着のようなワンピースを着て、肩にはタオルを巻いて、濡れた髪からはポタポタと雫が滴り落ちている。
まるで、魂の無い人形のようだった。
「美咲…ごめんね、急に…電話しても出なかったから…」
予想外の美咲の姿にも関わらず、真由子はある意味、冷静だった。
「ううん…さっきまで…お風呂、入ってたから…」
人形のような美咲からは、体温の感じられない声が発せられた。
俺は、幽霊のようにボーッと立つ美咲の左手に注目した。
力なくダランと垂れ下がった手には、開かれたままの携帯が辛うじて持たれている。
―――もしかして…―――
俺は意を決して息を吸った。
「美咲、さっき連絡があって…」
「今…」
けれど、せっかく吸い込んだ空気は、全てを言葉にする事なく、美咲に止められてしまった。
「今…海人くんに…聞いた…」
予想が当たった。
きっと、たった今、海人から聞いたんだと、俺は理解した。
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