ソレデモワタシハアナタヲアイス
「今…海人くんに…聞いた…」
目の前に現れた美咲は、視線が合わないまま、静かに口を開いた。
立っているのがやっとのように見える。
まるで、地に足が着いていないようにフワフワしていた。
「真由子、俺、車に行ってるから美咲の用意させて連れて来て」
隆太に言われて、私はハッとなった。
私よりも美咲の方がきっと辛い。
消えてしまいそうな美咲を、私はしっかり捕まえなければいけなかった。
「すみません。お邪魔します」
私は、靴を脱いで上がった。
今は、私がしっかりしないといけない。
「美咲、急いで着替えよう?隆太のお兄ちゃんが車、出してくれたから」
美咲は、自分の意思を失っているのか、素直に私の言う通りに部屋に戻った。
「美咲、座って。髪、乾かすから」
私は、何度も来ている美咲の部屋で、探す事なくドライヤーを手にした。
「髪、乾かしたら着替えないとね」
美咲は、黙ったまま頷いた。
私は、美咲の髪にドライヤーをかけながら、それ以上、余計な言葉をかけなかった。
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