ソレデモワタシハアナタヲアイス
「こっち」
警備員さんから場所を聞いた俺は、美咲と真由子の前を歩いた。
病院の廊下は、冷たい空気を漂わせて、静まり返っている。
俺達の歩く靴音が響く中、言われた通りに進んで行くと、ようやく視界に人影が映った。
「海人…」
俺が呼ぶと廊下に置かれた長イスに、頭を垂らしながら力なく座っていた海人が、ゆっくりと顔を上げた。
「…隆太さん…」
俺を見る海人の目は、すでに真っ赤になっていた。
「あ…美咲さん…真由子さんも…」
海人は、その目で俺の後ろから来た美咲と真由子を見た。
「すみませんでした…わざわざ来てもらって…」
海人は、立ち上がって目を伏せた。
「海人…おばさんは?」
見たところ、ここに居るのは海人1人のようだった。
「…この中…です…空人からずっと…離れなくて…」
海人は、自分のすぐ横にある閉ざされたドアを視線で指した。
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