ソレデモワタシハアナタヲアイス
「ソラ…」
美咲が部屋の中を見ているのに関係なく、ドアは機能通りに音もなく閉まった。
生々しい空人の両親の声が、閉まったドアによってボリュームを落とす。
「私の…せいじゃん…」
閉ざされたドアの前で美咲は座り込んだ。
「私が…あんな事、言わなきゃソラ…バイトなんかしなかったのに…」
美咲の目からは、重力に従って涙が頬を伝った。
「違うよぉ…」
ずっと黙っていた真由子が、美咲よりも涙を流して駆け寄った。
「美咲が悪いなんて、誰も思ってないよぉ…」
真由子は、美咲の腕を掴んで駄々をこねる子供のようにブンブンと振った。
「ソラ…」
声を出して泣き出した真由子に腕を掴まれたまま、美咲は静かに涙だけをとめどなく流した。
顔を歪める事も、泣き叫ぶ事もない美咲は、今まで見たどの美咲よりもキレイだった。
「美咲…」
俺は、美咲の前に移動して、ヒザをついて正面から美咲を抱きしめた。
けれど、美咲が俺の胸にすがり付く事はなかった。
ただ呼吸を震わせて、空人の死という現実を受け止めようとしていた。
「美咲…」
初めて、美咲を抱きしめた瞬間だった。
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