ソレデモワタシハアナタヲアイス
「お願いがあります」
誰もが美咲に注目した。
「私の髪、ソラに持って行って欲しいんです」
色んな思いを乗せた視線が、容赦なく美咲に突き刺さる。
「こんな事言うの、非常識だって分かってます。でも…」
頭を下げたままの美咲の声が震え出した。
「ソラと…約束してたんです…1番最初に私の髪…切ってくれるって…」
俺は、前に4人で将来について話した時の事を思い出した。
空人は、専門学校に入って美容師になる。
そして、最初に切るのは、美咲だと自慢げに言っていた。
美咲は、その事をしっかり覚えていた。
「美咲…」
俺と同じくあの時の事を思い出したのか、真由子の目からはさっき以上に涙が溢れた。
「美咲ちゃん」
涙を拭いながら、空人のお母さんが美咲に近付いた。
「そう言ってくれて有難う。空人もきっと喜んでると思うわ」
おばさんは、美咲の肩にハンカチを握りしめた手を置いた。
< 285 / 435 >

この作品をシェア

pagetop