ソレデモワタシハアナタヲアイス
「はい…」
美咲は、深呼吸をして目を閉じた。
突如、始まった断髪式に、集まった視線が息を止める。
ジャキン。
美咲の髪に、はさみが入る。
ジャキン。
音がする度に、美咲の顔に短くなった髪がかかる。
ジャキン。
美咲は、閉じたまぶたに力を入れた。
ジャキン…。
数回のはさみの音の後、束ねられた美咲の髪が、美咲から切り離された。
「美咲ちゃん」
呼ばれた美咲は、目を開けておばさんの方に向き直った。
「これで空人を忘れられる?」
おばさんは、切ない笑みを浮かべながら、切り離したばかりの髪を美咲に渡した。
「…ごめんなさい」
自分の髪を受け取った美咲は、口角を上げた。
「私、一度覚えた人は忘れない主義なんです」
美咲に笑顔を向けられたおばさんは、はさみを拭きながら微笑んだ。
それから空人を覗き込んで、使ったばかりのはさみを柩の中に入れた。
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