ソレデモワタシハアナタヲアイス
「大丈夫かな?海人くんも今更なんなんだろ?」
私は、学校の敷地から出て行く美咲を窓から見送った。
「なんだろうね。って美咲の口から空人の名前出るとさすがに焦るね」
そうは思えない態度を取っていた隆太が、苦い顔をした。
―――私ももうちょい上手くやんなきゃ―――
私は、改めて気持ちを引き締めた。
「じゃ、俺はそろそろ部活…」
隆太がカバンに手をかけて立ち上がったのと同時に、教室に駆け込んで来る人物が居た。
「美咲、まだ居るか?」
さっきまで教室でホームルームを取り仕切っていた担任の古葉ちゃんが、慌てた様子で戻って来た。
「美咲ならもう帰っちゃったよ」
私は、遅かったかと頭を抱える古葉ちゃんに近付いた。
「じゃ、明日だな。進路指導室、押さえとかないと…」
古葉ちゃんは、ブツブツ言いながら私達に背を向けた。
「先生、美咲がどうかしたの?」
古葉ちゃんの呟きに隆太が反応した。
「ああ。さっきのホームルームでやった進路調査で、美咲が急に志望校変えたんだ」
古葉ちゃんは、本当に困った顔で溜め息をついた。
「変えたってどこに?美咲、俺と一緒に国立のはずじゃ…」
珍しく隆太が答えを迫る。
「なんだ?おまえ達も知らなかったのか?美咲、東京の大学を今日の調査で書いたんだ」
私は息を止めた。
隆太もすぐに反応が出来ないでいる。
古葉ちゃんは、そんな私達を放ってまた職員室に戻って行った。
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