ソレデモワタシハアナタヲアイス
「美咲は今、何やってるんだ?」
5年ぶりに近くで見た先生は、相変わらずあの頃のままの顔をしていた。
「ただのOLですよ。それより先生…」
私は、質問に答えてから、さっきから抱えていた疑問を逆に聞いてみる事にした。
「なんでソラの命日に私がお墓に行ってるって分かったんですか?」
お墓なんて、鉢合わせでもしなければ、誰が来たかなんて分からないはずだ。
名前を書いて来るわけでもないのに、何故、毎年お墓に行っているのが私だと分かったのか、私は疑問だった。
「ああ、美咲、いつも黄色い花を飾って行くだろう?美咲は黄色が好きだって言ってたからすぐに分かったぞ」
先生は、透かしたような目で笑った。
「…なんで私の好きな色なんて知ってたんですか?私、そんな話し先生とした覚えないんですけど」
私は記憶をたどってみた。
「真由子が言ってたぞ。ほら、おまえ達が1年の時の文化祭で。華道部の展示教室に行ったら、真由子が得意気に美咲の好きな黄色い花で作品作ったって」
学校の先生というのは、そんな些細な事も見逃さないのかと少し驚いた。
けれど、先生がそんな事を覚えていたのなら、ソラが覚えていても不思議ではない気がして来た。
―――やっぱり偶然じゃなくて知っててやったのか…―――
私は、なんとなくソラに負けたような気がしていた。
いや、それは気ではなく、ずっと負けっぱなしだったのだと、今になって認めようと思った。
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