ソレデモワタシハアナタヲアイス
ソラより
仏壇の前で、私は無心に手を合わせた。
お線香の煙が、細くユラユラと上がりながら消えていく。
私は少しの間、ただそれを見つめた。
「美咲さん?」
仏壇の置かれた和室に通されてから、音沙汰の無い私を海人くんが呼びに来た。
「あ、ごめんね。ちょっとボーッとしてた」
私は、立ち上がって和室を出た。
「急に呼び出しちゃってごめんなさいね」
リビングでは、ソラのお母さんがお茶を出して持っていてくれた。
「いいえ、おかまいなく」
私は今日、私を呼び出したのは、海人くんではなく、ソラのお母さんだったのだと気付いた。
「あの…葬儀の時は…本当にすみませんでした」
私は、向かいに座る2人に頭を下げた。
「ああ、髪の事?良いのよ。それより美咲ちゃんの方がいろいろ言われたんじゃない?」
ソラのお母さんは、あの時の事を思い出したのか、淋しそうに笑った。
「私は…自分で言った事なので…」
いくら精神的に不安定だったとは言え、私はとんでもない事をしたのだと、後になってから気付いた。
本当は、ソラの家族に合わせる顔がない。
今のこの状況は、私にとってはあまり居心地の良いものではなかった。
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