ソレデモワタシハアナタヲアイス
「美咲って今まで私と隆太としかしゃべらなかったじゃない?そりゃ必要最低限な事はクラスメイトとかとしゃべってはいたけどさ。基本、私達以外の人間とは関わろうとしてないし」
私は、中学校までの本郷美咲を思い出していた。
「美咲も変わってるけど、空人も十分変わり者なんだよ。あの美咲の関わりたくないオーラに1日たりともめげずに立ち向かうのは、そうそう簡単に出来る事じゃないんじゃない?それか美咲から出てる冷気に気付いてないかなりの鈍感か」
私とは少し違う角度で2人を見ている隆太の意見に、私は吹き出した。
「そっか。空人が何も気付かないでこうなったっていう可能性もあるワケね。ある意味天才」
「だよね。俺はその確率の方が高いと思うけど」
隆太は腕組みをしてうんうんと頷いた。
何だか平和だな、と話題の2人に目を向けてみる。
空人が素直に美咲の指導に耳を傾けて手を動かしていた。
例え、空人が何も気付かずに美咲に接しているのだとしても、やっぱり私は、美咲を変えたのは空人だと思う。
私と隆太が出来なかった事を空人がやっている。
まるで魔法のようだった。
けれど、魔法はいつかとけてしまう。
かけるのが空人なら、とくのも空人なのだと、この時の私は少しも気付いていなかった。
< 31 / 435 >

この作品をシェア

pagetop