ソレデモワタシハアナタヲアイス
クラス会で美咲と再会してから、もうすぐ半年になろうとしていた。
俺達は、偶然にもそう遠くない場所に住んでいた事から、こうして時々、会うようになっていた。
「美咲、ずいぶん急いで来たんじゃない?」
隣を歩く美咲は、少し疲れているように見えた。
「だって2時頃に駅ら辺って言ってたじゃん。いくらアバウトな待ち合わせにしたって、あんな1時間も早く着いてたらさすがに焦るって」
美咲は、今だに待ち合わせが嫌いだった。
何時にどこで、といったような具体的な約束が嫌だと昔から言っていた。
だから俺達の待ち合わせは、いつも時間も場所も具体的には決めていなかった。
それでも携帯があるおかげで、美咲の変な好き嫌いに、俺は苦労する事なく対応出来ていた。
「良いんだよ、別に。俺がたまたま早く着いただけなんだから気にしなくて」
と言いつつも、俺は毎回、必ず美咲より先に着くようにしていた。
「それより俺に合わせて仕事休んで良かったの?」
今日は平日だった。
俺も美咲もデスクワークな人間だけど、勤務時間や休日はシフト制な職場だった。
「うん、平気だし。有休、余ってんだよね。それに写真展は今日までなんでしょ?せっかくなんだから休んで正解」
俺は、今日が最終日の写真展のチケットをチラつかせて美咲を誘い出していた。
「じゃ、ワザワザ休んで付き合ってくれたお礼に、今夜は俺が何かごちそうするよ」
美咲は、高い店でねと言いながらも、食事より写真展の方が楽しみな様子だった。
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