ソレデモワタシハアナタヲアイス

「あれ？美咲？」
休日ほどではないにしろ、それでもたくさんの人が行き交う中で、スーツにコートを羽織った男が、美咲を呼び止めた。
「え？イチ？」
美咲は、その男の声にしっかり反応して立ち止まった。
「なんだよ、久しぶりじゃん。何やってんだよ？」
美咲にイチと呼ばれた男は、ヤケに馴れ馴れしい態度で美咲に近寄った。
「今日は仕事休みにしたの。友達と今から写真展」
あの美咲が、俺が知らない男と親しそうに話しをしている。
俺は、クラス会の時に感じた違和感を思い出した。
俺が知らない間に、一体、美咲に何があったのだろう。
今、目の前に居る美咲は、俺が知っている美咲とは違う顔をしていた。
「美咲、知り合い？」
俺は、とりあえず外面を良くして、男の視界に入った。
「あ…知り合いっていうか…元カレ」
美咲は少し顔を歪ませて口ごもった。
「市原です」
一応、まともに社会人をやっているらしいその男は、ためらう事なく余裕な笑顔を見せた。