ソレデモワタシハアナタヲアイス
その目に映る為に
「あれ?隆太くんだよね?」
慣れない教室で、とりあえず席についていた俺に、見覚えのある顔が近付いて来た。
「覚えてる?私、佐々木真由子。幼稚園、一緒だったでしょ?」
俺が、記憶の中から佐々木真由子という人物を探すのは、そう難しい事ではなかった。
「覚えてるよ。マユちゃんでしょ?クラス一緒なの?」
真由子は、ニコニコしながら、そうだよと頷いた。
「あ、私の親友紹介するね。小学校一緒だった本郷美咲」
真由子は、隣に連れた中学1年生とは思えないほど顔の整った美咲を紹介してくれた。
「で、美咲、こっちは幼稚園一緒だった高橋隆太くん」
続いて、今度は俺を美咲に紹介した。
「よろしくね」
しばらく会っていなかったとは言え、友人の親友だという美咲に、俺は笑顔を向けた。
「よろしく」
美咲は、そのキレイな顔を緩める事なく、ただ口だけを動かした。
「美咲、隆太くんは大丈夫だよ。危険性ゼロだから」
真由子は、そんな美咲に対して引けを取らずに接している。
「ふぅーん、そう」
美咲は、明らかに興味のなさそうな顔を俺に向けた。
―――キレイな顔してるなぁ、性格は悪そうだけど―――
これが俺と美咲の出会いだった。
あの頃の美咲は、その見た目にプラスして、並外れた成績を持っていた。
テストでは毎回学年1位が当たり前で、なんとなく始めたバスケでは、小さいうちから特別に英才教育を受けていたのかと思う程の力を惜しみ無く発揮した。
そんな美咲が、学校中の注目を集めるのには、それほど時間はかからなかった。
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