ソレデモワタシハアナタヲアイス
「リュウ、もう着くよ」
美咲が俺の体を軽く揺すった。
「あ、ごめん。俺、寝てた?」
目を開けると、美咲が隣に座っていた。
「リュウ、疲れてんでしょ?実家帰ったらゆっくり出来そう?」
クリスマスの翌朝、隣で目覚めた美咲は、さっそく俺の事を「リュウ」と呼び始めた。
「うん、たぶん大丈夫だと思うよ。それより…問題は真由子だよね…」
俺はダルくなった首をグルリと回して溜め息をついた。
「そうだよね…まずその関門をどうにかしないと…」
美咲も苦い顔になった。
俺達は、年末年始の休みを利用して、新幹線で一緒に帰省していた。
けれど、つい先日から俺と美咲が付き合い始めた事は、誰にも伝えていなかった。
もちろん、あの真由子にも帰省する事以外は言っていなかった。
「美咲は良いとして俺は絶対、文句言われるよね…」
俺達は、少しの恐怖心を持ちながら、懐かしさを感じる、雪の見えるホームに降りた。
今の美咲の目には、俺が映っている、俺はそう思っていた。
< 353 / 435 >

この作品をシェア

pagetop