ソレデモワタシハアナタヲアイス
「中、入んないの?私、入りたいんだけど」
美咲は、さっきからずっと私が手をかけているドアを指差した。
「あ、ごめんね」
私がスライドするようにドアの前からよけると、美咲はためらう事なくガラッとドアを開けた。
「!…ビックリしたぁ」
教室の中のクラスメイト達は、一瞬、息を呑んだ様子だった。
けれど、教室に入って来たのが美咲だと分かると、相手にする事なく、別のネタでまた話しを始めた。
美咲には、仲の良い友達はいなかった。
いつも1人で居て、学校に来ても必要な事しかしゃべらない人物だった。
もちろん、私も美咲とはあまりしゃべった事がない。
別に何がどうでというワケではないけれど、誰もがなんとなく美咲を避けていた。
「ランドセル取るんじゃないの?」
急に美咲が、まだ教室に入れないでいるドアの外の私に声をかけた。
―――この状況で入れるワケないじゃん!なんで呼ぶのよ!―――
ビックリした私は、心の中で叫んだ。
けれど、さっきまでの混乱と涙は、何故か止まっていた。
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