ソレデモワタシハアナタヲアイス

私は、拳をにぎりしめて美咲の声に呼ばれるまま、静かに教室に入った。
「あ…マユちゃん…」
盛り上がっていたクラスメイト達が、私を捉えた途端、一気に固まった。
―――どうしよう…すっごい気まずい…―――
静か過ぎて、歩く度に上履きのゴムと床が擦れる独特の音が響く。
私は、知らん顔をしたまま、どうにか自分の席にたどり着いて、机の横にかけていたランドセルを手にした。
―――早く逃げたい…―――
私は、無意識に美咲を見た。
もしかしたら、私は美咲に助けて欲しかったのかもしれない。
けれど、美咲は私の事さえもおかまいなしという感じで、さっさとランドセルを背負って無言で教室から出て行った。
「ま、待って！」
理由は分からないけれど、私は急いでランドセルを背負って美咲の後を追い掛けた。