ソレデモワタシハアナタヲアイス
「あ、真由子戻って来た。じゃ、おやすみ、リュウ」
美咲との過去を思い出しながら、ゆっくりお風呂に入って来た私を部屋で迎えた美咲は、慌てる様子もなく隆太と話していたであろう電話を切った。
「アテツケ?」
私は、ワザと不機嫌な顔をして、美咲の隣に座った。
「なんでよ?真由子、どうしたの?リュウは友達じゃん」
美咲は、私の機嫌をうかがっている様子だった。
「ねぇ、美咲」
私は、さっきから胸につかえている事を思い切って聞いてみる事にした。
「隆太は空人じゃないんだよ?分かってる?」
洗ったばかりの髪から雫が落ちる。
けれど、今はそんな事を気にしている時ではない。
私は、美咲が心配でならなかった。
「ああ、なんだ、気にしてたのってソレ?」
美咲は、溜め息まじりに笑いながら、私から目をそらした。
「大丈夫だよ、真由子。私はリュウをソラに重ねてるつもりもないし、ソラの代わりにしてるつもりもないから。それに…」
どんな答えをくれるのか、黙って見つめる私に、美咲は一瞬でその目を凍りつかせて、真っ直ぐに私を見返した。
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