ソレデモワタシハアナタヲアイス
雨の誘い
「高橋さん、今日、仕事の後、皆で飲みに行きません？」
昼休みの社員食堂で、同期の佐藤と食事をしていた俺に、同じく同期の女子社員の相沢さんが声をかけて来た。
「うん。良いよ。どこに行くの？」
特に予定のなかった俺は、２つ返事で参加を申し出た。
こんな世の中でも、俺は運良くソコソコな企業に就職して、まあまあな社会人生活を送っていた。
美咲に認めてもらいたいが為に、必死に高めた学力が、俺にこんな結果を与えてくれる事になった。
「どこ行きます？高橋さんのお勧めのお店とかってありますか？」
この会社は、あまり不況の影響がないのか、同期入社の同い年がチラホラ見受けられた。
佐藤も相沢さんも、その中に含まれている。
「っていうか相沢さん、俺には声かけてくんないの？」
佐藤が行儀悪く箸で相沢さんを指した。
「え～、佐藤さんも来るんですか？しょうがないですねぇ～。でも高橋さんが来てくれるなら後はなんでも良いです」
相沢さんは、そのまま俺達の居るテーブルに着いて、食事を始めた。
「なんだよ、ソレ？高橋ビイキじゃん」
佐藤は、相沢さんを睨んで、また箸を動かした。
社会人になったとは言え、まだまだ中身が子供の俺達の会話は、学生の雰囲気が残されていた。
「じゃ、相沢さん、後でね」
先に昼食を終えた俺は、２人を残して社員食堂を出た。
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表紙・目次

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